本書は早稲田大学の教授で発達心理学やパーソナリティ心理学を専門としている小塩真司さんが
「心理学とは?」という事を子ども向けにイラストをふんだんに使って紹介しています。
心理学を学ぶきっかけとして本書では五つの章立てとなっています。
- 1章:人付き合いがうまくなる心理学
- 2章:自分と相手のことがわかる心理学
- 3章:勉強のやる気が出てくる心理学
- 4章:人間の怖いクセがわかる心理学
- 5章:幸せになるための心理学
章立てだけでも興味が湧きませんか?人生をより豊かに出来そうですよね!
見開きに右ページに1つの心理が簡単に書いてあり、左ページにその詳細な説明が記載してあります。時間のない人は右ページだけ読んで気になったら左ページを読むでもいいと思います。
さっそく気になった心理効果を取り上げ、書評していきます!
ハロー効果・ホーン効果
よい特徴や個性があるとそれに引きずられてぜ~んぶよく見える。
ハロー効果とはある一つの良い特徴に影響されて、他のことも高く評価してしまう心理のことです。
見た目がかっこいいから「頭もよさそう」「優しそう」「なんでもできそう」etc…
CMでタレントやスポーツ選手を起用するのもこの心理を利用するためです。
ホーン効果とは逆に、ある一つの悪い特徴がそれ以外の評価を落としてしまう心理のことです。
偶然よごれた服を着ていただけで「暗そう」「だらしなさそう」「貧しそう」etc…
なんでも切り抜かれるこの時代こそ、この効果を大きく受けそうですね。
子育てで言えることは、子どもの見た目やできる事、できない事を一つ見ただけで決めつけてはいけないという事です。
私の息子は帰宅してから手洗いするまでがいつも遅いので、それ以外のことも「どうせ遅いんだろう」と決めつけて、子どもが一生懸命やろうとしている事を見ずに「早くやってよ!」と強く言ってしまい、「今やってるのに・・・泣」と泣かしてしまう事がありました。。
これは後述する「無力感を学習する怖さ」に影響しそうで、注意すべきだと思いました。
思い込みが強い人ほどハロー効果に惑わされるそうですので、人や物事を評価したり何かを選ぶとき「思い込みだけで決めているかもしれない」と一度立ち止まって考えてみてくださいね!
ネーミングセンスが秀逸ですね
性格は遺伝と環境が半々
性格をつくるのは遺伝と環境がほぼ互角。
心理学では性格は「遺伝」と「環境」で決まるとされています。そして、遺伝は40~50%で環境の影響も50%ほどだそうです。
環境の影響というと「家庭環境が大事なのかぁ」と思うかもしれませんが兄弟でも全く異なる性格になります。これは子ども自身が成長とともに環境を選ぶようになり、この時の周りの仲間や友人との関係が個人の性格へ影響を与えるとされています。
とはいえ、家庭環境も当然、性格形成に影響を与える事は事実なので、子どもが安心して暮らせる家庭環境にしてあげたいですね!
また、親⇒子だけではなく、親⇐子も影響を与えます。落ち着きがない子には怒ってばかりで親が怒りっぽくなったり、素直でおとなしい子には叱ることが少なく親が穏やかな性格になるそうです。
私個人としては、親の性格について「怒りっぽいか、穏やかかどうか」はあまり気にする事ではないと思っています。大事なのは子どもの個性に合わせた育て方であり、バランスを保つことが肝要で、危険な行動には叱り、自身も予期せぬ失敗や出来事には受け入れる姿勢を持つことが大切だと思います。
私も妻も割とせっかちですが、息子はすごくのほほんとしてます 笑
記憶のしくみ
情報は一時的に脳に保管されるがすぐ消えてしまう。でも、くりかえし確認すればしっかりと保管される。
記憶って不思議ですよね。病的な要素は除いて、いきなり運転できなくなるとか、歩き方や普段話す言語を忘れるってないじゃないですか。
この人は父で、この人は会社の人で、家はここで会社はあそこににあって、、など当たり前のように記憶してますよね?
実は記憶も心理に関わっており、人間の記憶には3つの段階があります。
- 外部から情報を取り込む「記銘(符号化)」
- 取り込んだ情報を保存する「保持(貯蔵)」
- 保存した情報を取り出す「想起(検索)」
また、記憶には種類もあります。
- 一瞬だけ情報を記憶する「感覚記憶」
- 数秒~数十秒だけ情報を記憶する「短期記憶」
- 長期的にたくさんの情報を記憶する「長期記憶」
そして、長期記憶にはさらに2つの種類があります。
- 言語化できる「宣言的記憶」
例:今日○○した、出雲大社は島根県にあるなど
- 言語化できない「手続き的記憶」
例:自転車の乗り方、泳ぎ方など
覚えたことを長期記憶とするには、短期記憶を何度も反復することが効果的だそうです。
運転も会話も日常的に反復して頻繁に行っているから「長期記憶」出来て、すぐ「想起」もできるのですね!
また、単語などの暗記系の勉強では、1単語をじっくり1回で覚えるのではなく、単語帳を何往復もして何度もその単語を目にする様にするといいようです。最近では、1年間の英語の授業で1冊の教科書を5回繰り返す「ファイブラウンド」という英語の学習指導法があります。これも記憶の定着に有効なのかもしれませんね。
受験やテストを受けているような年代のお子さんには、この記憶の仕組みを教えてあげるだけでも勉強の質が変わって成績が上がるかもしれませんね!
数字を言語として捉え、母国語を話すようにスラスラ話し(計算)できたらなぁ
無力感を学習する怖さ
「ムリ」「ダメだ」「できない」と思いすぎるとがんばる力さえなくなる。
努力の実らない経験が続くと、何をしても無駄だと思い込み、努力をしなくなることを「学習性無力感」と言います。人間以外の犬やマウスにも無力感の学習があることが実験で分かっており、本書で紹介されています。
どんな実験かというと、1日目に犬を2つのグループに分け、片方には身動きできない状態で電気ショックを与え、もう片方は身動きできない状態で何もしませんでした。2日目に両グループを飛び越えられる程度の低い檻に入れ、電気ショックを与えました。すると、何もしていない犬は策を超え脱走しましたが、電気ショックを与えたグループは逃げずにその場にとどまったそうです。
この実験で無力感や無気力は生まれつきではなく、経験から身につくという事が言えます。
こどもが何かにチャレンジして、もし失敗した時。つい、「なんで出来ないんだ」「やっぱり無理かぁ」などボソッと言ってしまいがちですが、これは無力感を再認識させるだけの言葉で、ポジティブな要素はあまり無いように思います。
また、子ども自身も「やっぱり自分は無力だ。何をやってもダメ」と捉えがちになるリスクもあると思います。失敗しても「これは成功のための経験や!」と捉えられる様に親としてフォローしてあげたいものです。
私は息子が「無理」という言葉を言うと、「今は難しくて出来ないだけだから”無理”じゃなくて”難しい”と言ってね」と伝えています。細かいですが、「無理」という言葉は自分の可能性を殺す言葉だと思っていて、この無気力の話はすごく納得できました。
思い上がるのもいけませんが、適度に小さな成功体験を積み重ねる事が大事かもしれませんね!
家では「すごいね!」って認めているのに、人前では「うちの子なんてダメすよ~」みたいに一貫性がなく、他者と比較する様な言動は避けたいですね。
期待をかけると
誰かに期待されるとその期待に応えようと成績がぐんぐん上がる。
人が相手に対して期待すると、その相手が期待に応えようと行動するようになることを「ピグマリオン効果」と言います。
アメリカの心理学者ローゼンタールは実験で先生の子どもへの期待が成績に影響する事を示しました。
実験内容は、小学生を成績とは関係なくA,Bの2グループに分け、被験者である先生に「Aグループは成績が伸びる子たちで、Bグループは成績の良くない子たち」と伝えました。結果、8か月後に先生が期待を持って接したAグループの成績が向上しました。
これは先生のふるまいにも影響を与え、期待する方へ好意的な評価するようになるそうです。期待する方もされる方も行動が意識しないうちに変化するという心理ですね。
手を洗うのが遅いとき「早く洗いなさい!」ではなく「(血管ピクピクしながらですが笑顔を作って)手を洗ってくれるとパパとママはすごく嬉しいな!」という期待の働き掛けをするとすぐ洗ってくれる時があります。それもこのピグマリオン効果なのかもしれませんね!
妻から「なんでやってないの?もういい。」って言われて、お口も体も固まるのはこのことだったのか!
やる気を出させるには
最初はごほうびで火をつけて自分の心が燃えてくるのを待とう。
何かに向かって行動ややる気を起こすことを「動機づけ」と言います。
勉強の”やる気”を起こすために、ご褒美をあげたりして学習意欲を高める「外発的動機づけ」は効果がある場合もありますが、本当の勉強好きにするには自分の中で学ぶ楽しさを見出す「内発的動機づけ」が重要だそうです。
アメリカの心理学者レッパーの実験で、絵を描くことが好きな子どもを集めて半数の子どもには「絵が描けたらメダルをあげる」と約束しました。しばらくすると、報酬のある子どもは雑な絵を描くようになり、結果的に自発的に絵を描かなくなりました。一方で、報酬のない方はずっと書き続ける子が多かったそうです。
メダルという報酬が外発的動機づけとして、自発的に絵を描くやる気を低下させてしまったのです。
ただ、日本人の心理学者速水敏彦は子どもは外発的動機づけから内発的動機づけに移行すると考え、どちらも大切なものと捉えたそうです。
外発的動機づけで絵を描かなくなる話は別の本でも読んだことがあり、その時は「ご褒美はダメなんだよな。。」と悩んでいましたが、外発的動機づけも着火剤としては利用してよく、ご褒美が必ずしもNGでない事でなんだか心が救われました。
私自身も中学生の時に学年30番以内になったらPS2を買ってもらえる約束をして、勉強を頑張った記憶があります。それから少なからず知的好奇心は高まった気もしますし、趣味のギターも「モテたい」という外発的動機で始めましたが、今は自分が「弾くことが楽しい」という内発的動機で続いています。
何事もバランスですね
確証バイアス
人は見たいものだけを見て 聞きたいことだけを聞いて 信じたいことだけを信じる。
人間は自分にとって都合のいい情報を集めて、都合の悪い情報は無視する傾向があります。これを「確証バイアス」といいます。
本書では血液型を例にしており、A型は几帳面という確証バイアスがある場合、A型のクラスメイトのノートがきれいだと「やっぱりね」と思い、A型でノートが汚い人をみると「これは○○だから例外」などと無視してしまうそうです。
既に知っていることを確認できると心地よさを感じ、無意識のうちに自分の考えに沿った情報を受け入れ、反対の情報は見ない様にしてしまうのだそうです。
いや~、これは本当に納得ですね。私も確証バイアスによくかかっているのだろうと思いました。
特に現代でいうと、SNSは自分好みにどんどんカスタマイズされるため、あたかもそれが全てかの様な錯覚をしてしまいますよね。確証バイアスに陥らないためにも、情報を収集するときは自分の知っている情報以外にも別の可能性がないか、反対意見の主張なども確認する必要がありそうです。
余談ですが有名なアインシュタインは次のことを言ったとか言わなかったとか
「常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクション」
時代や環境、背景などで常識は変わるので、この確証バイアスに陥らない様にしたいですね!
「血液型で分ける」というのが万人受けしやすくて、本とか儲かりそうですよね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は「一生モノの教養が身につく こども心理学」を私の独断と偏見と確証バイアスも交えて紹介させて頂きました。心理を学ぶことで人生プラスになることだと思います。他にも紹介しきれなかった面白い心理がたくさんありますので、興味ある方は読んでみてはいかがでしょうか?
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