本書は、2013年11月から約10年間「日経xwoman DUAL」において、子育てに関する家庭の悩みを発信してきた記事から、特に人気だったものを30個に厳選しております。AIの急速な発展を背景に、社会構造が大きく変化していく中でも、子どもがたくましく生き抜くための知恵を各分野の第一線で活躍する専門家に徹底取材し、6つのテーマに分けて紹介しています。
- Chapter1:「生きる力」を育むために家庭でできること
- Chapter2:勉強面で悩んだら
- Chapter3:この先の受験・進路、どう考える?
- Chapter4:子どもの心配事・問題行動への処方箋
- Chapter5:子どもを伸ばす親子関係&コミュニケーション
- Chapter6:子どもの健康・発育に悩んだら
厳選とはいえ、30個は多いので特に気になった内容を中心に紹介します。

さっそく書評していきます!
好奇心が思考を深める
深い思考が出来る様になるには、「好奇心」が重要です。
好奇心がベースにあり、いろいろ知ったり、学んだり出来る様になるそうです。
では、好奇心を如何に育めばよいのか。ポイントは4つです。
①子どもが発する「問い」をなるべく流さない
子どもが疑問に思った事は、まず親がその問いに興味を示すことが大切です。そして、「どうしてかな?」「なぜだと思う?」といった仮説を立てさせる様に誘導するといいそうです。
②日常的に取り組む
忙しいかもしれませんが、日常的に大人から問いを与え、仮説を出し合う工夫をすれば子どもはどんどん変わってきます。問いは「なぜあそこに人が立っているのかな?」など些細な事でもなんでもOK。正解を出す事が目的ではなく、対話のやり取りを活性化させる事が目的です。週1回でもいいので3か月続けると変わってくるそうです。
③「正解を言わないといけない」空気感を作らない
こういった空気感は問いや仮説立てが上手くいきません。子どもがそう思っているなと感じたら、あえて「それは違うだろう」と突っ込みたくなる変な仮説を言うといいそうです。「そんな仮説もありなんだ」と安心し、「正解を言わなきゃ」から「正解を言わなくていいんだ」に変わりはじめます。うまく言語化できない時は、言い換えてあげるのも大切です。
④正解を出して終わらない
正解を探すのではなく、次の問いを立てていきます。先ほどの例だと「どうして座らず立っているのかな?」や「人って何時間立っていられるのかな?」といった別の問いを出し、分からなければ一緒に情報を探す事が大事です。問いと仮説を繰り返す事で、どんどん別の興味が生まれていき、次第に思考が深まるクセがついてきます。
低学年の「勉強つまずき」への対処法
低学年の勉強は必ずしも出来る必要はなく、心配は無用とのこと。とは言っても、勉強できない様子を見ると不安になりますよね。。ここで一番やってはいけない事は、子どもが勉強嫌いになってしまう親の言動や出方。
低学年の勉強のつまずきは必ず追いつけますが、一度勉強嫌いになってしまった気持ちを変えることはのは難しい
つまずいている内容にによって親がとるべき対応が異なるそうです。
問題:漢字や計算練習をしない、漢字が書けない、計算が出来ない
対応:単純に練習不足なので、親が主導でさせてよい。やればやるだけ成果が出るので多少叱られても心は折れない。
問題:算数の文章題が解けない
対応:低学年は発達段階が伴ってない場合もあるため、本人も何が分からないか分からない状態。親としてはイライラしますよね。こんな時は、一度、その場から離れるのがベスト。いずれ発達段階が追い付いて、一瞬で出来る様になるそうです。
問題:注意や指摘すると反発する
対応:「この計算違うよ」などと指摘した時に反発する子は、丸をもらう事や親が喜ぶことが目的になっているため、勉強本来の「解けた!」という喜びを学びなおす必要があります。おすすめは、パズルや迷路を楽しむこと。集中力、図形感覚、俯瞰する目に加え、解けた時にスッキリ感を味わえてできた喜びを養えるそうです。
それでもイライラしてしまうという方もいらっしゃるかと思います。それは「自分の子どもだから」という事が大きいそうなので、積極的に第3者機関に頼るのもいいそうです。感情なしに、子どもの声に耳を傾けられるメリットがあります。
「不安先行型」の親がはまる落とし穴
「宿題やった?」「歯は磨いたの?」「早く着替えなさい!」。。。
子どもが思った様に動かない時、つい口を出してしまいませんか?
口うるさく言うと、「ガミガミ言われる」⇒「気分が上向かない」⇒「その行動が嫌になる」という悪循環を生み、その子をつぶしてしまうとのこと。
逆に、伸びる子の親には共通の特徴があります。それは「邪魔をせず、待つ」こと。
「【書評:No4】子どもが伸びる待ち上手な親の習慣|子どもは待って育てよ!」でも紹介していますが、子育ての大原則は親が邪魔しなければ子は伸びるという事です。
大事なポイントは2つ。「子どもの目線に立つ」「物事の本質を理解する」です。
私は5歳の息子がピアノ教室で練習している時、姿勢が悪かったので椅子を少しずらして姿勢を正してあげようとしました。このとき、息子は「なんで演奏のじゃまするの!」と怒り、それ以降はピアノを弾くことを辞めてしまいました。
まさに良かれと思ってした事がめちゃくちゃ邪魔していたんです。子どもの目線に立って想像すると、集中している時に椅子をずらされたらおそらく私もイラっとすると思います。また、この時、他の親の目を気にして「姿勢が悪いから正しなさい」という口出しもすべきではないと思いました。
本質は、姿勢を矯正する事ではなく、ピアノが楽しいという気持ちや集中力を伸ばす事。他の親の目を気にしているのは、自分がどうみられるかを気にしている親中心の考えですし、好きなにれば、上手くなりたいと思い、おのずと正しい姿勢で弾くようになるはず。
皆さんも良かれと思ってした事が子どもの邪魔になっていないか思い返してみてください。
どうしても欠点が目につき、不安になってあれこれ声をかけてしまうという方はもっと自分が楽しくなる事に時間を使ってあげてくださいね。詳しくはこちらの記事「【書評:No4】子どもが伸びる待ち上手な親の習慣|子どもは待って育てよ!」もご覧ください。
失敗させない生き方は育たない。失敗に対する恐怖心が増すばかりで、チャレンジしない人間になるリスクがある事も考えないといけないですね。
自ら動かないのは親のアプローチミス。「仕組み」で改善。
子どもが言う事を聞かない時や返事をしない時、親として「もっとしっかり教育しないと」と思い、きつく叱てしまい、自暴自棄になったりしていませんか?
そんな時、認知行動療法の考え方を取り入れると楽になるかもしれません。
認知行動療法とは、解決すべき問題があった時に、原因を人ではなく考え方や行動に求め、精神論に頼らずに仕組みで解決していく心理療法の一つ。
まずは、認知のゆがみを知る必要があります。
「宿題の前にゲームをするなんてだらしない」「これくらいできるべきだ」などが当たります。
「親が指揮命令すべきだ」「これだけ言えばもう大丈夫だ」というのも認知のゆがみ。
必要なのは「宿題とゲームの順番が違う」「できていない」という事実のみに目を向け、仕組みを考えて「すべきこと」を伝えていきます。
ここで仕組みづくりは必ず、子どもと同じ立ち位置で対話しながら、一緒に考えていく事が絶対。
親と子は上下関係ではなく、同僚ポジションであると捉えてください。親が一方的に決めるのではなく、選択肢を与え、最終決定権は子どもに託します。ここが抜けていると、子どもはやらされている感が残り、親は命令口調となり、気づけばまたイライラ子育てになってしまいます。
仕組み(習慣)化におすすめなのが、以下の4つ。
既に習慣化していることに、してほしいことをくっつける
例えば、歯磨きが習慣になっているなら、「歯を磨いたら、寝る前のトイレに行こうね」と歯磨きとトイレをくっつける。洗面⇒トイレといった、行動の同線も考慮出来るとよりよいです。
やり方を教える時期と捉える
片づけないと悩む親が多いですが、低学年のうちは出来ない子がほとんど。今はまだ暮らし方を教える時期と割り切って、親がやってしまうのはOK。「やらせる」ではなく「教える」なので、命令口調でなくなるので、気が楽になります。
すべきことを見える化する
親と子では日常生活の中で持っている情報量に大きな差異がある事を認知しましょう。やるべきことを視える化します。ノートに書きだして、終わったら消していくという方法がおすすめです。
楽しんで続けられる工夫をする
例えば、1タスクこなしたら1ポイントとして、毎月ポイントに応じたお小遣いにしたり、○ポイントでゲーム○分できるママ(パパ)Payを導入するなどがおすすめ。注意点は物と交換しない事。欲しいものを手に入れると、目的を達成して、次の努力に繋がらなくなる可能性があります。
もう一つ重要なのは親子の信頼関係です。
監視ではなく、観察を。
監視は「○○すべき」の認知のゆがみが起き、欠点ばかり目が行きがちになります。どんな時にやる気が出ているのかを冷静に「観察」してみてください。
確認ではなく、会話を。
「宿題した?」「手を洗った?」は対話でなく、確認です。子どもが話をしているときは聞き役に徹して、評価はせずに、内容をリピートしたり、「それは嬉しかったね」と気持ちを代弁してあげると信頼のあるコミュニケーションが出来るそうです。
子の「身長」を伸ばすためには
子どもの身長が伸びる時期は一度きりしかありません。
どうせなら高身長になってほしいと思う親御さんは多いのではないでしょうか?
まず身長はある程度の予測が可能です。一番シンプルなのが両親の身長から割り出す方法。
最終身長予測の計算式
男の子
(父親の身長+母親の身長)÷2+6.5cm
女の子
(父親の身長+母親の身長)÷2-6.5cm
両親が平均値という人ほど誤差が出にくくなるそう。逆に双方が平均から離れている場合には両親どちらかの遺伝的優位性が出るとのことです。
他には成長曲線から予測する方法や思春期の開始時期、骨年齢から予測する方法もあり、本書でそれぞれ紹介されています。
次に睡眠、食生活、運動で背を伸ばせないのか?という疑問が出ると思います。
例えば「たくさん寝ればいいのか」「牛乳を飲めば伸びるのか」といった事は、実は必ずしも背を伸ばす因子にはならないとのこと。また、サプリメントも販売されていますがエビデンスのある特効薬はないそうです。
では、どうすればいいのか。唯一出来る事は「子どもの体重管理」です。
思春期に入る時期が遅いほど最終身長が高くなる傾向があり、この思春期を決める要素に体型が大きく影響するそうです。
そして、肥満傾向が思春期を早めることが分かっています。逆に痩せ傾向の場合も必要な栄養素が不十分になってしまいます。
幼児期のうちに、最低でも低学年のできるだけ早めの時期に標準体重に近づくよう、整えておくことが理想です。
思春期は成長ホルモンの分泌量が増え、大幅に身長が伸びます。平均身長の男子で30㎝、女子で25cmほど。思春期の開始時期は、男子の平均が10~13歳、女子の平均が8~12歳。そこから約3年が身長獲得の重要な期間。十分な睡眠や運動、バランスの取れた食事はもちろんですが、体重をしっかりチェックしていきましょう!
確実に身長を伸ばす方法としては「成長ホルモン治療」がありますが、保険適用外になりやすいため、高額(1.5~2年間で250万~300万)で医師の技量によっても効果が大きく変わるそうです。もし、自費で行う場合、日本小児内分泌学会に属しているような専門医がおすすめとのこと。
「近視進行予防」は低学年が鍵
子どもの視力低下が進みやすいのが小学1~3年生ぐらいの時期。
デジタル機器を使い続ける事は黒目が内側に寄ってしまう内斜視になりやすいのだそう。低年齢から近視が進むと、大人になった時に「強度近視」になる可能性が高くなり、目の病気のリスクが高まるとのこと。
発症リスクとして、緑内障14倍、網膜剥離22倍、黄斑変性は40倍。発症年齢も30~40代と早め。
予防策としては、当然ですが画面を見る時間を減らすことが有効。デジタル機器の使用は1日1時間以内が理想です。学校でのデジタル教科書の標準化が進むにつれ、この画面見過ぎ問題も顕在化してくるかもしれませんね。
他には屋外で過ごす時間を増やす事。光の刺激によって眼球の奥行(眼軸長)が伸びにくくなり、近視予防に効果があるそう。
子どもがスマホやゲーム画面を見ている光景は、なんとなく良くない印象でした。今回デジタル機器の使いすぎで、近視進行の原因になるという事を知り、科学的根拠に基づいて、良くない事だと認識できました。
おわりに
今回は日経BPの「AI時代を生き抜く力を育む子育て30の極意」を紹介しました。この本の良いところはその道のプロが何人も出てきて、いろんな視点で偏りなく読める点だと思います。他にも学校への行き渋りの対処法や運動能力に影響する土踏まずに関する靴の選び方なんていうコアな内容まで本当に幅広く取り上げ、目から鱗の内容盛りだくさんの一冊でした。気になる方は是非本書を手にとって読んでみてください!
コメント